STOの紹介

STO(Security Token Offering)とは?

セキュリティトークン(Security Token) (以下「ST」)とは、株券や社債券などの有価証券に表示される権利を、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(「トークン」と表現されることも多いです。)に表示したものと考えられています。そして、このようなSTにも有価証券規制が適用されることを明確化するために、2020年5月1日に施行された改正金融商品取引法及び関連政府令(以下「金融商品取引法等」)において、「電子記録移転有価証券表示権利等」が定義されました。
このようなSTを発行して行う資金調達を総称してSTO(Security Token Offering)(以下「STO」)といいます。
また、電子記録移転有価証券表示権利等は次のように分類されます。

電子記録移転有価証券表示権利等

STOは新しい資金調達の方法として注目され、従来は資金調達が困難であったビジネスやプロジェクトへの活用、各種財産やサービスを原資産としたこれまでの有価証券とは異なる商品性を持つ金融商品として期待されています。
従来、企業が一般投資家も含めた幅広い投資家から新たに資金調達を行う場合、その多くは、新株式の発行を行って株式公開を行うIPO(Initial Public Offering)(以下「IPO」)によって行われていましたが、2018年頃米国等では暗号資産を利用したICO(Initial Coin Offering)(以下「ICO」)が一時期注目を浴びました。しかし、ICOの法令上の整理等規制が整備されない中で実施されたことから、事業の実体のない詐欺的なICOも多く問題視されるようになりました。また、被害が多発すると、適切な投資案件への投資も委縮し、イノベーションを阻害するおそれがあることから、日本では発行するトークンが暗号資産や前払支払手段に該当する場合は資金決済法等及び関連政府令(以下「資金決済法等」)、電子記録移転有価証券表示権利等に該当する場合は金融商品取引法等で規制することとされました。

STOは、このように金融商品取引法等によって規制される資金調達手段ですが、加えて当協会等の自主規制機関が投資家保護のための自主規制を行うことで公正かつ適切な資金調達手段のみならず、投資家にとって魅力のある投資手段として、今後発展が期待されています。

STOとは

STO(Security Token Offering)の特徴

STは、権利者や権利数を電子的に記録した帳簿(以下「電子帳簿」)の書き換え(財産的価値の移転)と権利の移転が一連として行われます。また、記録については取引データがハッシュ値を介し連鎖して保存され、安全かつ効率的に流通するものとなりうるため、以下のような様々なことが可能になると期待されています。

多様な商品への投資が可能に
STは、トークンを介して権利を管理することができ、また、STプラットフォーム上で電子帳簿の書き換えが行われ、権利の移転も一連として行われるため、トークンによって容易に権利を移転させることができることから、流動性が高まると考えられています。流動性が備わることで、単一不動産等の限定的なマーケットでのみ取引されていた商品への投資がしやすくなります。
加えて、未上場株式、美術品等のこれまで金融商品として馴染みのないアセット商品の発行・流通を実現することも期待されています。
取引コスト低下による少額取引が可能に
現在、上場株式の取引では、売り手と買い手が証券会社を通じて、証券取引所で取引をマッチングした後、証券保管振替機構(以下「ほふり」)が証券保有者の情報を振り替えることによって取引が完了します。他方、STの取引では、売り手と買い手が証券会社による店頭取引で取引をマッチングした後、STに使用されるプラットフォーム(以下「STプラットフォーム」)上で電子帳簿の書き換え(財産的価値の移転)が行われ、かつ、当該電子帳簿の書き換えにより権利の移転も一連として行われるため、ほふりがなくとも取引を完了することができ、取引全体のコストの低下が期待されています。
また、STでは、基本的に電子的に取引が完了することが想定されていることから、契約締結前交付書面や目論見書等の電子化推進が期待されています。交付書類等の電子化により取引コストの低下も可能になります。
これらの取引コスト低下により、STでは、少額取引が可能な小口化商品の実現が期待されています。
365日24時間取引が可能に
現在、証券取引の多くは平日に取引が行われています。これは、現在の上場有価証券は、基本的に証券取引所やほふりを介することでしか取引が行うことができない結果、証券取引所やほふりの営業時間に依拠せざるをえないためです。他方、STの取引では、STプラットフォーム上で電子帳簿の書き換え(財産的価値の移転)が行われることで、権利の移転も実現できることから、当該プラットフォームに投資家がアクセス可能な環境が整備されることで、将来的には365日24時間の取引も可能になり、取引時間の拡大が期待されています。

STO(Security Token Offering)の主な流れ

STOの主な流れを概観すると、下記の図のとおり、投資家の皆様に金融商品が届くまでに、STプラットフォームを中心とした手続きが行われています。STOでは、証券発行のプロセスがSTプラットフォーム上で処理されることが大きな特徴です。

STOの主な流れ

※本資料は、あくまでも記載日時点でのST発行の主な仕組みを示すものであり、個別事案につきましては仕組みが異なることがあります。また、本資料の内容に関しましてはその内容の正確性及び確実性を保証するものではありません。

STO(Security Token Offering)で活用されるブロックチェーンの分類

ブロックチェーンとは、ネットワーク上に分散する多数のノード(コンピュータ等)でトークンの移転等を相互認証し、暗号技術を用いて実質的に改ざん不可能な態様で台帳を共有する技術基盤です。
STプラットフォームでは、取引の記録方法として、基本的にブロックチェーン技術が使用されています。ブロックチェーンは、複数のノードによって取引の記録が行われるため、仮に一部のノードに不具合が生じても、他のノードが正常に作動していればシステムを維持することができます。
また、ブロックチェーンは管理者の有無や参加するノードの制限範囲によって以下のように大きく3つに分類されます。

パブリック型
特定の管理者がいないブロックチェーンです。不特定多数かつ参加するすべての者がノードとしてネットワークに接続し、データを共有します。第三者を介さずに誰でも利用でき、中央集権的管理が不要になるブロックチェーンの特徴を最大限に活用できるといわれています。ビットコイン等の暗号資産管理に採用されています。
コンソーシアム型
特定の管理者が複数いるブロックチェーンです。管理者に許可されたノードのみがネットワークに参加でき、特定の目的を共有する複数の会社(組織)が管理、運営します。特定の者との間でのみデータが共有されるという特徴があり、信頼性のあるデータを安全な環境の中で共有できるといわれています。現在発行済の一部のSTのSTプラットフォームで採用されています。
プライベート型
特定の単一の管理者がいるブロックチェーンです。管理者に許可されたノードのみがネットワークに参加できるが、コンソーシアム型と異なり、単一の会社(組織)が管理、運営します。データの共有が限定されていることから、信頼性のあるデータを安全な環境の中で共有できるといわれています。現在発行済の一部のSTのSTプラットフォームで採用されています。