会長挨拶

ご挨拶

会長 北尾 吉孝

本協会は、2020月5月に金融商品取引法上の認定自主規制機関となって以来、電子記録移転有価証券表示権利等(いわゆるセキュリティトークン。以下「ST」という。)のうち、電子記録移転権利等の自主規制を行うために、広く関係者との協議を行うなど、体制整備を進めてきました。

昨今、革新的な技術開発が世界的に進展し、フィンテックなど金融業界に留まらず、様々な業界において導入が進むAIやブロックチェーン・分散台帳技術、IoT等の分野は、大きな潮流となる可能性を秘めています。
STもブロックチェーン・分散台帳技術を利用した革新的分野の一つです。STを活用した資金調達手法であるセキュリティトークンオファリング(以下「STO」という。)は、新たな資金調達手法として米国を中心に注目を集めていましたが、我が国においても2020年5月1日に施行された改正金融商品取引法において、新たに「電子記録移転権利」が規定されるなど、STOの普及に向けた環境が整備されつつあります。
現在のSTの発行状況は、不動産をより小口化したいというニーズを受けて、不動産を原資産としたファンドの発行が大多数を占めるものの、STの可能性は、不動産に限らず、代替エネルギー、インフラ設備、航空機や運輸機器関連など、これまで個人投資家による投資が広がっていない領域の資産にも広がっていくことが想定されています。また、従来流通が想定されていなかったみなし有価証券については、STとして数多く発行されることで、投資家間での換金・流通も容易に行うことができ、かつ、その取引もより活発になることが想定されます。さらに、現在発行市場中心のSTのマーケットは、今後、徐々に流通市場が形成・整備されることで、より幅広い投資家がSTにアクセスできる環境が構築されることが期待されています。本協会では、STの可能性を拡げ、STをより普及させていくことを目的として、昨年「セキュリティトークン市場活性化委員会」が発足し、また、ST市場や税制にかかる各種ワーキングにおいて、発行市場のみならず、流通市場の形成・整備に向けた検討を継続的に行ってきました。
加えて、様々なデジタル環境の進化が目覚ましいなか、資金決済分野でもステーブルコイン、特定の権利の行使(配当や株主優待券等)や役務の提供等に利用できるユーティリティトークンなどの検討が活発化しており、これらとSTが組み合わさることで、より一層ST投資の利便性が向上していくことが期待されており、本協会でも資金決済分野の動向も適宜注視しております。

本協会では、投資家がより一層安心かつ信頼できる投資環境の整備・充実のために、今後も全力で励んでまいります。また、ST市場の活性化を通じて我が国経済の一層の発展に貢献してまいります。

一般社団法人日本STO協会
会長 北尾 吉孝